既存の電子カルテと併用する
医療用の音声認識ソフトとの違いはどこにあるか
医療用の音声認識ソフトと、診察の会話から記録を作る仕組みの違いを、入力の仕方、出てくるもの、既存の環境への影響に分けて整理しました。すでに音声入力を導入している場合の判断材料です。
すでに医療用の音声認識ソフトを使っている、あるいは検討したことがある場合、会話から記録を作る仕組みとの違いが分かりにくいことがあります。どちらも「音声で記録を作る」と説明されるためです。
前提として、どちらも電子カルテそのものではありません。生成された文章を既存の電子カルテへ入れて使います。違いはその手前にあります。
入力の仕方が違う
口述入力は、記録に残したい内容を医師が声に出します。「主訴、頭痛。三日前から」と話せば、その通りの文字になります。キーボード入力を声に置き換えるものです。
会話からの記録作成は、医師と患者の通常の会話を対象にします。口述する必要はなく、普段どおり診察します。
この違いは運用に直結します。口述入力は診察とは別に話す時間が必要です。会話からの記録作成は診察中に別途話す必要がない代わりに、診察の音声を扱うことへの説明が必要になります。
出てくるものが違う
口述入力から出てくるのは、話した内容そのものです。話し方がそのまま記録になるため、話す時点で記録の構成を考えることになります。
会話から作る仕組みから出てくるのは、記録の形に整えられた下書きです。会話には記録に残さない内容も混ざるため、必要な情報を選ぶ処理が入ります。その分、出てきたものが意図と合っているかの確認が必要になります。
つまり、負担のかかる場所が違います。口述入力は話す時点に、会話からの記録作成は確認の時点に、それぞれ集中します。
既存の環境への影響が違う
口述入力は、多くの場合カルテの入力欄にカーソルを置いて音声で入力する形をとります。そのため、使っている端末で動作することが条件になります。カルテ側の対応が必要になる場合もあります。
会話からの記録作成は、生成された記録を電子カルテへ移す手順さえ確保できれば、カルテ側の対応を必要としない場合があります。カルテとは別の端末で動かす構成も選べます。
ここは導入の可否に直結するので、検討時に必ず確認してください。
どちらが向くか
口述入力が向く場合
- 記録の構成が定型的で、話す内容をあらかじめ組み立てられる
- 診察の音声を扱うことに運用上の制約がある
- 記録を書くタイミングが診察と分かれている
会話からの記録作成が向く場合
- 診察中に記録を書ききれず、後に持ち越している
- 口述する時間を別に取るのが難しい
- 経過を追う診察が多く、会話の中に記録すべき情報が含まれている
併用という選択
どちらか一方に決める必要はありません。診察の種類によって使い分けている例もあります。
ただし、運用が二重になる負担は考慮してください。どの診察でどちらを使うかの判断が現場に増えると、結局どちらも使われなくなることがあります。
次に読むもの
方式ごとに電子カルテへ何を求めるかは電子カルテを変えずに音声入力を追加する方法で整理しています。精度の確かめ方は自院で確かめる手順を、仕組みの位置づけはAIカルテとは何か、そして何ではないかをご覧ください。