音声カルテの基礎

音声からの記録作成の精度を自院で確かめる手順

音声から診療記録を作る仕組みの精度は、公表されている数値では判断できません。診療科や診察室の環境で結果が変わるため、自院で何をどう測るかを手順として整理しました。

音声から診療記録を作る仕組みを検討すると、必ず精度の話になります。ただ、公表されている数値をそのまま判断に使うことはできません。

理由は単純で、測定条件が示されていない数値は比較できないからです。どの診療科で、どんな診察室で、何人が話している状況で測ったのか。これが違えば結果は変わります。

このページでは、自院で確かめるための手順を書きます。

前提: 何の精度を見るのか

ここで扱うのは電子カルテそのものではなく、会話から記録の下書きを作り、医師が確認してお使いの電子カルテへ移す仕組みです。この場合、精度と呼ばれるものは少なくとも2つに分かれます。

文字起こしの正しさ — 話した言葉が正しく文字になっているか。

記録としての使えるかどうか — 文字起こしを元に作られた下書きが、確認して手直しすれば使える水準にあるか。

前者が高くても後者が低いことはあります。必要な情報が抜けていたり、不要な会話が混ざっていたりする場合です。判断に効くのは後者です。

測る前に決めること

誰が確認するか

実際に記録を書いている方に試していただきます。普段書いていない方が見ると、手直しが必要かどうかの判断がぶれます。

どの診察で測るか

普段の診察をそのまま使ってください。ゆっくり話す、専門用語を避けるといった調整をすると、導入後の実態と離れます。

何件で測るか

1件では判断できません。診察の内容によって結果が変わるため、同じ診療科で複数件、できれば内容の異なる診察で試してください。

測る項目

手直しにかかった時間

これが最も直接的です。下書きを確認して保存できる状態にするまでの時間を測り、これまで記録を書いていた時間と比べます。短くならなければ、精度がいくら高くても導入の意味がありません。

手直しの種類

何を直したかを記録しておくと、傾向が見えます。

  • 事実と違う記載があった
  • 必要な情報が抜けていた
  • 不要な内容が入っていた
  • 表現を整える必要があった

前の2つは確認の負担が重く、後ろの2つは軽い傾向があります。同じ「手直しあり」でも意味が違います。

うまくいかなかった条件

失敗した診察の条件を控えておいてください。次のような要因が考えられます。

  • 診察室に医師と患者以外がいた
  • 方言や施設内でのみ通じる略語が多かった
  • 周囲の音が大きかった
  • 話す速度が速かった、あるいは複数人が同時に話した

これらは診療科と診察室の環境で決まるため、他院の結果は参考になりません。

判断の基準を先に決める

測ってから基準を決めると、結果に引きずられます。試す前に「どうなっていれば導入するか」を決めておいてください。

たとえば次のような形です。

  • 記録にかかる時間が、これまでより短くなっている
  • 事実と違う記載が出た場合に、確認の工程でそれを見つけられている
  • 診察の流れを止める操作が、許容できる回数に収まっている

3つ目は精度そのものではありませんが、実際の導入可否を分けます。精度が十分でも操作が診察を止めるなら、運用は回りません。

数値で比較できないことを受け入れる

一般的な精度の数値では判断できないという結論は、検討する側にとっては不便です。ただ、条件の違う数値を並べて比べるほうが判断を誤ります。

自院の診察で、自院の担当者が、自院の基準で測る。手間はかかりますが、これが唯一確実な方法です。

次に読むもの

合わない診療体制については向く診療所・向かない診療所で整理しています。実際の操作の流れは外来の流れを止めずに運用するを、仕組みそのものの位置づけはAIカルテとは何か、そして何ではないかをご覧ください。

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