音声カルテの基礎
AIカルテとは何か、そして何ではないか
AIカルテと呼ばれるものが実際に何をする仕組みなのかを、電子カルテとの違い、記録のどこを担うか、担わない部分は何かに分けて整理しました。導入検討の最初の段階向けです。
「AIカルテ」という言葉は、指しているものが話し手によって違います。電子カルテそのものを指す場合もあれば、記録を書く作業を助ける仕組みを指す場合もあります。検討を始めるとき、ここが揃っていないと話が噛み合いません。
このページでは、何を指すのかを整理したうえで、その仕組みが記録のどこを担い、どこを担わないのかを書きます。
まず、電子カルテとは別のものです
多くの場合、AIカルテと呼ばれているのは電子カルテを置き換えるものではありません。診察の内容から記録の下書きを作り、それを既存の電子カルテへ入れる、という位置づけの仕組みです。
つまり、導入しても電子カルテはそのまま使い続けます。判断の軸は「今のカルテを変えられるか」ではなく、「今の診察の流れに操作を足せるか」になります。
コエカルもこの位置づけで、診察の会話から SOAP 形式の記録案を作り、医師が確認したうえでお使いの電子カルテへ貼り付けていただく形をとっています。
何をする仕組みか
記録を書く作業を分解すると、おおよそ次の段階に分かれます。
- 診察で交わした内容を把握する
- そこから記録に残すべき情報を選ぶ
- 決められた形式に整える
- 内容を確認する
- 電子カルテに保存する
AIカルテと呼ばれる仕組みが担うのは、主に1から3です。会話を文字にし、必要な情報を選び、SOAP のような形式に整えるところまでを自動で行います。
何を担わないか
ここが検討時に最も誤解されやすい部分です。
内容の確認と責任
作られた記録をそのまま保存する運用にはできません。内容を確認し、最終的な責任を負うのは医師です。 自動で作られた文章に事実と異なる記載が混ざる可能性は残るため、確認の工程は運用から外せません。
診断や治療の判断
記録の作成を助ける仕組みであって、診断や治療方針を決めるものではありません。これは技術的な限界の話ではなく、そういう位置づけの製品だという話です。
電子カルテへの保存そのもの
先に書いたとおり、生成された記録を電子カルテへ入れる操作は残ります。ここを「連携」と表現する製品もありますが、自動で書き込むのか、人がコピーして貼り付けるのかは製品によって違います。比較検討の際は必ず確認してください。
「音声認識」との違い
音声を文字にするだけの仕組みと混同されることがあります。
音声認識は、話した言葉を文字に変換します。医師が「主訴、頭痛。三日前から」と口述すれば、その通りの文字が出ます。出てくるのは話した内容そのものです。
会話から記録を作る仕組みは、医師と患者の通常の会話を対象にします。口述する必要はない代わりに、会話には記録に残さない内容も混ざるため、必要な情報を選ぶ処理が入ります。出てくるのは会話そのものではなく、記録の形に整えられた下書きです。
どちらが優れているという話ではなく、診察の進め方によって合う方が変わります。
検討の最初に確認すること
以上を踏まえると、最初に確認すべきなのは製品の性能ではなく、次の3点です。
今の電子カルテを変える必要があるか。 多くの仕組みは変えずに使えますが、電子カルテに内蔵された機能を使う場合は話が変わります。
生成された記録をカルテへ入れる手順はどうなるか。 その操作が一日に何回発生するかまで含めて把握してください。
誰がいつ確認するか。 確認の工程を運用のどこに置くかが決まっていないと、下書きが溜まるだけになります。
次に読むもの
電子カルテを変えずに使う方法についてはこちらで方式ごとに整理しています。自院に合うかどうかの判断材料は向く診療所・向かない診療所に、外来での実際の流れは外来の流れを止めずに運用するにまとめました。