音声カルテの基礎
記録の負担はどこで発生しているか
診療記録にかかる時間を工程ごとに分解し、音声から記録を作る仕組みが触れる部分と触れない部分を整理しました。導入で何が変わり、何が変わらないかを見積もるための材料です。
診療記録に時間がかかっている、という話は工程を分けないと具体的になりません。「記録に時間がかかる」の中身は施設によって違い、どこが重いかで打ち手が変わります。
このページでは工程を分解し、音声から記録を作る仕組みが触れる部分と触れない部分を示します。
前提
ここで扱うのは電子カルテそのものではなく、診察の会話から記録の下書きを作り、医師が確認してお使いの電子カルテへ移す仕組みです。カルテを入れ替える話ではないため、カルテの操作性そのものに起因する負担は範囲外になります。
工程を分ける
記録が終わるまでを分解すると、おおよそ次のようになります。
1. 診察の内容を覚えておく
診察中に記録を書けない場合、内容を記憶に留めたまま次の患者に移ります。ここは時間として計測されませんが、負担としては重い部分です。診察が続くほど記憶が薄れ、後で書くときの想起に時間がかかります。
2. 記録に残す情報を選ぶ
交わした内容のうち、何を残すかを決めます。経過を追う診察では、前回からの変化をどう書くかの判断も入ります。
3. 文章にする
選んだ情報を SOAP などの形式に整えて文字にします。キーボード入力の速さがそのまま効く部分です。
4. 内容を確認する
書いた記録に誤りがないかを見ます。自分で書いた場合は短く済みますが、他者が書いた記録を確認する場合は長くなります。
5. 電子カルテに保存する
カルテを開き、該当する患者を選び、記録を入れて保存します。
仕組みが触れる部分
会話から記録を作る仕組みが担うのは、2と3です。会話から必要な情報を選び、形式に整えた下書きを作ります。
結果として 1の負担も軽くなることがあります。下書きが残っていれば、記憶だけを頼りに後から書き起こす必要が減るためです。ただしこれは、診察のたびに下書きを確認する運用にできている場合に限ります。
仕組みが触れない部分
4の確認は残ります。 むしろ、自分で書いた記録を見直すより、自動で作られた下書きを確認するほうが慎重になる分、当初は時間がかかることがあります。これは慣れによって短くなる部分ですが、導入直後の見積もりには入れておいてください。
5の保存操作も残ります。 生成された記録を電子カルテへ移す操作が必要で、その回数は診察の件数だけ発生します。
加えて、録音の開始と停止という操作が新たに増えます。工程が1つ減って1つ増える形になるため、差し引きで短くなるかは実際に試して測る必要があります。
自院で見積もる
以下を測ると、導入で何が変わるかの見当がつきます。
- 診察中に記録を書き終えられている割合
- 書き終えられなかった記録を、いつ書いているか
- 1件あたり、記録を書き始めてから保存するまでの時間
- そのうち、電子カルテの操作にかかっている時間
4つ目が大きい場合、この種の仕組みでは改善しません。 カルテ側の運用を見直すほうが効きます。
3つ目が長く、かつ2つ目が診療後や帰宅後になっている場合は、下書きがある状態の効果を体感しやすい条件です。
数字は自院で取る
他院の削減時間は、診療科・診察件数・記録の書き方が違えばそのまま当てはまりません。判断に使うなら自院で測った数字を使ってください。
次に読むもの
自院に合うかどうかは向く診療所・向かない診療所で条件を整理しています。実際の操作は外来の流れを止めずに運用する、仕組みの位置づけはAIカルテとは何か、そして何ではないかをご覧ください。